保健栄養学科 栄養イノベーション専攻には、専門的な科目を束ねる3つの領域があります。その一つである臨床検査学領域では、栄養士の学びを足がかりに、臨床検査技師の資格取得に必要な科目を学びます。
1年?2年次は栄養士のための学びを中心に、3年?4年次は臨床検査技師に必要な学びを深めます。科目数が多いと思うかもしれませんが、臨床検査技師として仕事に就いてから「栄養士の資格を取っていてよかった」という卒業生が大勢います。臨床検査技師と栄養士のダブルライセンスで、医療の世界へ飛び込みませんか?

栄養イノベーション専攻
幅広く医療を学ぶ臨床検査学領域
「臨床検査技師」とは?
臨床検査技師の仕事は、大きく分けて2つあります。
一つは「患者さんに触れて対面で行う検査」。生体検査あるいは生理検査とも言われます。例えば、心電図検査で循環器を、脳波や筋電図で神経?筋機能を、呼吸を検査して肺機能を、また、眼底や聴覚などの感覚機能を、そして、画像検査では磁気共鳴を利用してMRI検査や超音波で腹部や心臓や乳房などの検査も行います。
例えば、心電図検査で循環器を、脳波や筋電図で神経?筋機能を、呼吸を検査して肺機能を、また、眼底や聴覚などの感覚機能を、そして、画像検査では磁気共鳴を利用してMRI検査や超音波で腹部や心臓や乳房などの検査も行います。
もう一つは「患者さんの体から採取した試料(検体)の検査」。尿や便、血液や膿、表在組織などを対象にする検体検査です。
どちらも、正確にかつ迅速に検査にし、適切に結果を責任持って出す、それが使命です。
現在、検査センターや病院では、機械化が進んでいます。その中においても、臨床検査技師は、機器や試薬などの精度管理や報告された結果の正誤や妥当性など、日々の確認や最終的なチェックを行うこともあります
検体検査には病理検査、微生物検査、血液検査、輸血検査のほかに、化学反応による色の変化を見る生化学検査や主に抗原抗体反応をさせる免疫学検査、また、遺伝子?染色体検査など様々な分野があります。
例えば、病理担当の検査技師は、手術や解剖で取り出された臓器や細胞などを扱い、組織構造や変性などを顕微鏡で観察するために、薄い標本を作製し染色します。血液検査でも血液以外にも、医師が穿刺して採取した骨髄液を染色した標本を作製します。これらは、病理医が最終診断を正確に行うための、とても重要な作業です。
微生物検査では、空気感染を防ぐため陰圧装置があり、管理対策が万全な中で細菌の培養などを行って、結果を判定します。
報告書の結果から診断をするのは医師ですが、結果が適切か判断するのは臨床検査技師の役目です。場合によっては、患者さんの情報や病歴、または他の検査結果などを調べることもあります。身体の栄養状態を把握することもあり、栄養士の知識はここでも役立つはずです。
臨床検査技師課程のカリキュラム
医療機器もAI搭載で益々高度化かつ多様化し、いろいろな検査ができる時代です。そのため修得するべき科目も数が多いです。本校では、内容を充実させてスパイラルに学べるように組まれ、講義を受け理解し、続く実習ではその学びを基に、技術力を身に着けるようになっています。
さまざまな職種が連携する「チーム医療」に必要なこと
忘れてはならいのは、「医療従事者はチーム医療の一員である」と言う心構えです。
よく、ケアとキュアと言う言葉が聞かれますが、患者さんと接し対応する看護師は「ケア」を、疾患を治療して治す医師は「キュア」を主に担います。チーム医療においては、患者のみならず対人との接し方、接遇の心得(相手への配慮および理解、傾聴など)が求められ、そして他職種を理解し協働して連携することにあります。報連相を基本に、コミュニケーション力を高めることがとても重要なのです。
臨床検査技師課程の中でも特徴的な科目である「医療コミュニケーション実習」では、検査科で検査ができるだけでなく、これからの臨床検査技師に求められる、円滑なチーム医療のためのコミュニケーションツールを体得していきます。
さまざまな検査を実際に学ぶ、3ヶ月間の臨地実習
4年次では現場の医療機関にて3か月間の実習があります。毎日病院に通い、生理検査や検体検査の中の各部門を順に回り、諸先輩技師の働く様子や業務内容、そして病院の組織や検査科の在り方を学びます。
近年、法律が改正されて、臨地実習の実習単位数が一律に揃えられました。本学は以前から十分に実習期間を設けていたので何ら一切変わることなく、今まで通り、じっくりと現場を学ぶ期間になります。
人と関わり、常にチャレンジできる臨床検査技師に
「医療で治療する前に予防、予防の前にはまず健康。その健康を維持するには栄養が必要で、その栄養状態を検査するにも検査ができた方がいい」――女子栄養大学に臨床検査技師資格取得の課程がある理由です。しかも、本学では栄養学の上辺を学ぶだけでなく、調理学、食品学、給食実習などの関連科目も学び、国家資格である栄養士資格が得られます。
日本は超高齢社会に向かい、病院やクリニックや検査センターだけでなく、在宅医療にも関わり訪問して検査をするような技師も増えています。また、認知症の検査ができる資格から予防活動にも関われるように拡がっています。
臨床検査技師の資格はそれぞれの分野に認定試験がありますので、常にスキルアップが必要です。多職種連携のチーム医療の中で、世の中の変化を見ながら、いろいろなことにチャレンジできる精神も学んでいきましょう。
お話を聞いた先生

▲井越 尚子 先生
【キーワード】
在宅医療?訪問診療、在宅検査技師、臨床検査値、IMT経年変化、酸化ストレス?抗酸化度